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1-06 バックロードホーンの進化系


バックロードホーンは、長岡鉄男氏の作例が有名ですが、そこからの進化についても興味深いものがあります。

長岡氏の作例になかったBHと、その特徴について説明していこうと思います。


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TQWT

TQWTとは「Tapered Quarter Wave Tube」の略で、日本では、下記のサイトが有名です。

「VIC's D.I.Y.」http://vicdiy.com/products/tqwt/tqwt.html


構造は1934年の「Voigt Pipe」に基づくものですが、簡便な構造で豊かな低音再生が可能な方式です。

最低音域の再生をあえてバスレフ方式とすることで、幅広いレンジ感を獲得。内部の大きなテーパーチューブにより、適度な中低音域の厚みを担保している構造になります。



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バックロードバスレフ(BHBS)

「バックロードバスレフ(BHBS)」とは、バックロードホーンの開口部にダクトを装着した方式です。
    

方式自体は1980年代には存在したようですが、2000年を過ぎた頃からの石田氏、大山氏、小澤氏らの活動により、広く知られるようになってきました。

 ・石田氏(ネットネームkenbe): ブログ「ハイエンド自作スピーカー」の著者
 ・大山美樹音氏: 音工房Z代表 https://otokoubouz.com/
 ・小澤隆久氏: 雑誌「無線と実験」「ステレオ」などで活躍するオーディオ評論家

作者ごとに少しづつ設計指針が異なり、小澤氏は「小澤式VBH(Vented BackLoad Horn)」と命名しているなど、設計者の個性が織り込まれるのが特徴です。 他にも「白土式DDBH(ダンプダクト・バックロードホーン)」という方式も提唱されており、下記サイトではそれらの設計が比較されています。

(参考)http://eco-speaker.sblo.jp/article/186929183.html


私もバックロードバスレフ方式のスピーカーを設計し製作したことがありますが、驚くほどに低音のレンジを拡大できる方式だと感じています。

  
著者(カノン5D)の設計したバックロードバスレフ型スピーカー
「S-045 スワン・ザ・バスレフ」

この方式は、ダブルバスレフとバックロードホーンの中間にあたるもので、特にホーン長を短くするなどでダブルバスレフに寄せた設計とした場合は、例えば10cmフルレンジであっても40Hz以下の低音再生を狙うこともできます。

通常のダブルバスレフで低音レンジを欲張った場合、中低域が再生されにくい「中抜け」という状態になりやすいのですが、バックロードバスレフは不足しがちな中低音を音響管の共鳴音で補填して違和感の少ない再生音を実現しているようです。

使用するユニットは、一般的なバスレフ型に向いているタイプが好適だと感じています。バックロードホーン向けユニットでの製作例もありますが、それらは低音の量感はかなり少なめになる傾向があるようです。

この方式のデメリットは、低音の質的表現だと感じています。ホーン開口部を塞いだ結果、ホーンとしての動作はなくなっており、いわゆるバックロードホーンに期待する解放感のある低音からは遠のいてしまうという印象を抱いています。

もちろん、圧倒的な超低音再生や、中低域のクセの少なさというメリットもあるので、本方式の普及は楽しみな所があります。

<参考>
バックロードホーンの歴史と進化【令和2年版】 | PHILE WEBコミュニティ
kaneya's HP New Annex 私が考えるダンプダクト・バックロードホーンと石田式バックロードホーンバスレフ
「バックロード開口部にダクトを追加する方法(DDBH)」は1980年代から使われていますよ(笑): オリジナルスピーカーっぽい遺跡   趣味のローエンド・オーディオを楽しむ♪




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ハイブリッド・レゾナンスチューブ

「ハイブリッド・レゾナンスチューブ」とは、途中で大きく断面積が変わる音響管をもつ箱のことです。


 
著者(カノン5D)の設計したハイブリッド・レゾナンスチューブ型スピーカー
「S-054 83Diamond」


一般的な共鳴管型スピーカー(長岡鉄男氏の「ネッシー」など)では、基音の共鳴音の倍音は、3倍音・5倍音と奇数になりますが、このハイブリッド・レゾナンスチューブでは2倍音も含めて再生することを狙っています。

音は、雄大でパワフル。バックロードホーンと共鳴管の中間のような解放感に溢れる音で、一般的なバスレフ向けのユニットでも対応できるのが特徴です。

ただし、本体サイズが極めて大きくなるという欠点があり、16cm口径ユニットを搭載した「RF-1000」では実に400L近い容量になりました。 25Hzを余裕で鳴らすRF-1000の音は、俊敏でキレのある低音が持ち味。等身大の和太鼓を表現できる稀有な作品になりました。

AudiFill RF-1000




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ラビリンス・バスレフ

「ラビリンス・バスレフ」とは、音響迷路(ラビリンス)のような長い管を用いたバスレフ方式のことです。


(写真)【小寺信良の週刊 Electric Zooma!】
巣篭もりにスピーカー自作、6cmフルレンジでも低音は出るか!?-AV Watch



基本的にはバスレフ方式に準じるものなので、バックロードホーンとは言い難いかもしれません。ここでは簡単に紹介するに留めておきます。



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ゆらぎ組み立て法 バックロードホーン

「ゆらぎ組み立て法」とは、バックロードホーンの内部の定在波を軽減するために、音道内部に傾斜させた板材を組み込む方法です。考案者のアールefu氏は、本方式のバックロードホーンで雑誌のコンテスト入賞を重ねています。



(写真)RFリビングオーディオ2 コンテスト受賞機RF211からの発展… (fc2.com)
(参考)RFリビングオーディオ2 ゆらぎ組み立て法?をちょっぴり進化 (fc2.com)


アールefu氏の作例には「2連空気室構造」「ゆらぎ反射板」などの独自の工夫がされており、音道の構造を含めても長岡氏のバックロードとは大きく異なるものになっています。



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まとめ

バックロードホーンは、その発展形として様々な方式が提案されています。ダブルバスレフに近い方式や共鳴管に近い方式など、今後も多くの方式が提案されると思われます。

それらの利点・欠点を知ったうえで、どの方式を作るのかを考えるのも楽しみになりそうですね!


  


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