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1-5 集合住宅でもオーディオはできるか?


オーディオは「機材」がメインと思われがちですが、実際はそれをいかに生活に組み込むか、も大切な要素になってきます。

とくに、アパートやマンションなどの集合住宅にお住まいの方で、音出しに不安のある方もいらっしゃるかもしれません。


私は「集合住宅でも、オーディオは楽しめる」と断言します。

いままで数多くのオーディオマニアのお宅に訪問して交流をしてきましたが、その大半は集合住宅に住んでいらっしゃいました。言うまでもなく、音が問題になることはなく、近隣住人とも良好な関係を築いていました。
そして、何よりも、私自身がアパート暮らしだからです(笑)




一人暮らし×オーディオ


雑誌やSNSでは、豪華なオーディオ専用ルームをもつマニアの写真を見ることがあります。しかし、実際のオーディオマニア、とくに資金も限られている若年層の多くは、集合住宅に住みながら、創意工夫を凝らしてオーディオを楽しんでいる方が多くいらっしゃいます。

若手オーディオマニアで多いのが、実家を出ての一人暮らしパターンです。特に、首都圏であれば1Kマンションも多く、間取りも余裕があるとはいい難い状況です。



ここでは、6畳の1Kマンションをイメージしたイラストを載せています。

6畳を横長に使う設置の場合、スピーカーとの距離は1m~1.5mと比較的近接距離でのリスニングとなります。そのため、オーディオ的な音のまとまり感や、視覚的なバランスから、スピーカーはブックシェルフ型を選択する人が多いようです。

ポイントは、ソファーとベッドを兼用できるタイプの「ソファベッド」を使いスペースを有効活用しているところでしょうか。この配置では左右には比較的余裕のある空間がとれますので、お気に入りのCDや漫画本はスピーカーの両脇のラックに収納することができます。



音を出しても大丈夫なのか?

先ほどの例は、1Kの都市部マンションでの例でした。
「集合住宅ではオーディオNG!」と思っている方には、まだ違和感があるかもしれません。

ここからは、「どうして、集合住宅でオーディオの音を出しても大丈夫なのか?」に対して、一つづつ解説していきます。



本格オーディオ ≠ 大音量



まず、本格的なオーディオであることと、大きな音で音楽を聞くことは、必ずしも同義ではありません。これを誤解していらっしゃる方が驚くほど多いので、しっかりと説明しないといけません。

オーディオ趣味人のなかには「生演奏に近い大音量が必要!」と考える人もいますが、オーディオの楽しみには必ずしも大音量は必要ではありません。


ここで一つ、たとえ話をしましょう。
「スポーツカーに乗ったら、スピードオーバーで検挙されるのか?」

スポーツカーは、走ることを重要視して設計されています。もちろん、速く走るためのパワーも十分です。
しかし、法定速度を超えるスピードで走るかどうかは人それぞれです。アクセルの加減を間違えずに、しっかりとマナーを守って安全運転していれば、警察のお世話になることはないでしょう。
スポーツカーに乗ることは、(単にスピードを出すことだけではなく、)人馬一体となる快適なドライブフィーリングを楽しむことや、官能的なエンジン音を聴くこと、オリジナルのチューニングを楽しむことなど、スピード以外でもいくらでも魅力があるはずです。


これはオーディオでも同じです。
本格オーディオは確かに大音量を出すことができます。しかし、本稿「1-1 趣味としてのオーディオ」で書いたような、オーディオの楽しみを見出すことや、自分のシステムから出る音を満喫するためには、必ずしも大音量は必要ありません。


ただ、残念ながら、過剰な大音量で周囲に迷惑をかける人が後を絶たないのも事実です。
これは、オーディオが問題ではなく、人としてのマナーの問題です。スポーツカーが悪いのではなく、運転手が悪いのです。

「グッドマナー、グッドオーディオ!」
ぜひ、あなたが良きオーディオマニアの一人であることを願っています。



小音量の満足度を上げる「使いこなし」


もし、音量を大きくしないと楽しめないオーディオがあるのなら、それは音質がイマイチである何よりの証拠です。細かな音・ニュアンスが出せない、低音がしっかり再生できていない。そんなシステムは、音量を上げないと満足度が得られません。

値段の上下にかかわらず、しっかりと「使いこなし」をされているオーディオシステムは、小音量で聴いても十分な満足度が得られます。オーディオは、買って揃えただけでは良い音は出ません。「使いこなし」によって、その機材が持っているポテンシャルを引き出すことが、満足度の高いオーディオ再生には最も重要だと感じています。

この「使いこなし」の技術については、第3章でじっくり書いていこうと思います。



集合住宅でオーディオを楽しむための、四ヶ条


1.時間帯
同じ音量でも、時間によって聴こえ方が異なります。

まず要注意なのは、夜の9時以降。いわゆる夕飯から睡眠モードに切り替わる人が多い時間帯です。いくら新譜のCDを聴きたくても、この時間からは小音量に徹しましょう。
いうまでもなく、深夜の音だしは厳禁です。布団に入って眠りに入るまでの時間は、非常に聴覚が鋭くなります。この時間帯に遠くの車の音が聞こえたり、冷蔵庫の運転音さえ気になった経験のある方は多いのではないでしょうか?

安全なのは、朝の10時~夜の9時まで。休日であっても、大半の人が活動的に動いており、多少の(といても限度はありますが!)騒音には気にも留めない時間帯です。ただし、工場や病院・介護施設で、3交代や夜勤で働いていらっしゃる方もいると思うので、十分な配慮と確認は必要です。


2.適切な音量
集合住宅のオーディオで、適正な音量は「会話ぐらいの音量」だと考えています。一般の建築構造でも問題なく防音でき、(上記の安全時間帯であれば)隣人に迷惑が掛からない音量だといえます。
この音量を知るには「オーディオで音楽(サビの部分)を聴きながら、声を張らずに会話ができるか?」が、良い判断基準になるでしょう。もし同居人がいなければ、「電話やラジオの音声を聴くのに差し障りのないオーディオ音量」というのも、チェック項目となるでしょう。


3.部屋の防音レベルの把握
「隣人の出す生活雑音」を聞くことで、おおよその防音レベルが判断できます。

・掃除機の音は聞こえるか?
・椅子を動かす音(ガタン、グーッとか)が聞こえるか?
・洗濯機の音は聞こえるか?
(最近は静かな洗濯機も多いですが)

大抵、この3つが聞こえないなら、十分な防音ができている建物であり、オーディオ趣味ではほぼ問題のないレベルです。


もし、以下の項目が当てはまるなら要注意です。この場合は、壁による防音はほぼ期待できない物件です。スピーカーは諦めて、ヘッドフォンなどで楽しむのが良いかもしれません。

・隣人の生活音がほぼ聞こえる。(掃除、洗濯のタイミングが分かる)
・会話をしていること、テレビを見ていることが分かる。(ゴニョゴニョ聞こえる)
・電話の着信音が聞こえる。



~新居に引っ越すなら~

まず、『角部屋1階』を狙いましょう。1階なら下に音が響く心配はないですし、角部屋で隣人を気にしなければ良い間取りであれば、かなり防音には有利になります。

そして、隣人が『子連れの世帯』であればなおGOODかもしれません。一人暮らしや夫婦二人だけと比べて、幼いお子さんがいる世帯は家庭内が騒がしく、多少音が漏れても大丈夫なことがあります。

構造としては、「鉄骨(2階建てアパートに多い)」より「鉄筋(3階建て以上のマンションに多い)」のほうが防音に優れていると言われます。
また、ダイワリビング(D-room)のアパートは、鉄骨物件であっても比較的に防音が優れているという話を聞くことがあります。私も以前に同アパートに住んでいましたが、隣人がいるかいないか分からないほどの優れた防音性でした。言うまでもなく、オーディオも大丈夫でした。


4.ご近所づきあい
これもとても大切です。気になる事があったら、トラブルになる前に伝えることができる関係を築く。これはオーディオ趣味以前に、大人のマナーとして大切なことです。
別に何か特別なことをする必要がありません。玄関先ですれ違った時に、笑顔で挨拶をする。まずはそこからスタートしましょう。



以上、4つ挙げました。
オーディオ騒音で問題になったケースでは、上記4つの2つ以上を欠いていることが多いです。大人のマナーとして基本的な事ですので、しっかり実践して楽しいオーディオライフを送りましょう!



実家暮らしで、オーディオを楽しむ

実家暮らしは、隣人への音漏れや、部屋のスペースなど気にしなくて良いのが楽ですが、実家暮らしならではの苦労もあるかと思うので、ここに書いておきます。



ここで紹介するのは、6畳の部屋にオーディオを置いた例です。
布団で暮らしているため、椅子は小さく簡素なものとしています。

学生時代は、これに学習机や参考書が置いてあるので、部屋の物量が大変なことになりますが、
このゴチャゴチャ感も実家オーディオの魅力です(笑)

オーディオの特徴はやや大型のスピーカーを置いて、縦長設置としていること。この設置なら1.5m以上の試聴距離を確保することができますし、木造(低音がヌケやすい)の実家では低音量感が十分にあるスピーカーを使いたいところです。
オーディオを置くスペースにも多少の余裕があるので、頑張ればセパレートアンプも狙えるかもしれません。


このように大型の機材を置くことができる実家暮らしですが、家族への配慮が大切になります。
ご家族がオーディオに興味がない場合はなおさらです。
木造一戸建ては、部屋同士の防音はほぼ皆無で、どうしても音が洩れてしまいます。音への気遣いとして、「時間」「音量」「防音性能の把握」「コミュニケーション」の4つが大切なのは、先の集合住宅の例と同じですね。

さらには、家族の動線を塞がない配慮も大切です。扉から部屋に入りやすいか、部屋から窓を開けられるか。自分の部屋であっても、スマートなオーディオシステムが組めるかどうかは、オーディオマニアの技量が問われるところでしょう。




家族向けマンションのLDKでの、リビングオーディオ

家庭をもつ若いオーディオマニアのスタイルに多いのが、「リビングオーディオ」です。


こちらは、12畳のLDKにオーディオを設置したイメージとなります。オーディオ機器は、テレビのある一面に並ぶ形となります。

このレイアウトは数件のお宅で見ましたが、オーディオの物量は最小限にせざるをえないものの、12畳の空間は解放感があり、6畳の専用室とはまた違う魅力がありました

ここで出てくるのは掃除の問題。大型のスピーカーより、小型のスピーカー+安定したスタンドの方が、掃除はしやすいのだとか。音の面でも、ルームアコースティック(部屋の吸音処理など)をバッチリやらないと実力を発揮しにくい大型スピーカーより、鳴らしやすい小型スピーカーの方がメリットが大きいかもしれません。

リビングオーディオは、あくまでも共用スペース。訪問したお宅では、奥様も(オーディオは分からないと言いつつ)好きな音楽を聴いて楽しんでいる様子でした。同居人と上手くやっていくのが、リビングオーディオ成功の最大の秘訣かもしれません。



「専用室」は、オーディオマニアの夢!

オーディオマニアの夢は、やはりオーディオ専用室でしょう。雑誌などで見るオーディオルームは20畳を超える完全防音・調音の部屋まであります。

しかし、10畳以下の部屋を専用室として使っているマニアも多くいます。(というか、8割以上はそうでしょう。) 子供が増えたタイミングで戸建て住宅を購入した際に、専用室を設けた人は大抵このパターンのようです。
ちなみに、前述のような大規模なオーディオルームは、還暦などを機にリフォームしたときに造った…という話を多く聴きますね。

専用室とっても、10畳以下であれば先述の「実家暮らし×オーディオ」と同じようなシステム展開が多いでしょうか。それでも専用室なので、パワーアンプを床置きにしたり、ケーブルを床に最短距離で這わせたりと、好き勝手にできるのが最大のメリットですね!





以上のように、近隣住人や家族への配慮は、オーディオにおいて大切です。持続的に楽しめるからこその趣味であって、こうした気配りができることが良きオーディオマニア像ではないでしょうか。

次回は、第一章の まとめ です♪



  


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