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33. DIY Loudspeaker Builder's Meeting 2025試聴記

 

 2025年10月12日に、大阪のYOSHUホールで開催されたDIY Loudspeaker Builder's Meeting 2025に行ってきました。「2way以上のマルチウェイであること」という枠で集まった自作スピーカーの発表会です。

 昨年に引き続き、2回目の開催ということもあり、随所に工夫がなされていました。良いイベントになるようどんどん進化していくのは素晴らしいですね。


 主催者 Iridium17さんの告知ページはこちら


作品紹介


ピラミティカルチューブ・バスレフ

 

 栗田さんの作品「TW4S&MAOP7 ピラミティカルチューブ・バスレフ」。トールボーイ型スピーカーの内部に三角形の仕切り板を入れることで、内部定在波の軽減を図っています。

 Woofer: Mark Audio MAOP7
 Tweeter: Mark Audio TW4S

 シャキっとした明るさのある立ち上がりが、パーカッションを生々しく再生。音のキレと、低音の伸びが魅力のスピーカーだと感じました。ドラムセットのスネアやシンバルも粒立ちがしっかりしているのは快感。これは、内部の定在波の削減に加え、フィンランドバーチ合板による剛性が効いているのでしょう。

小口径ウーハーながら低く伸びた低音も得意としており、ベースの存在感を感じることができました。深くフワっとした軽さのある低音は、大きな箱ならではですね。




掘り出し物ユニットによるパッシブラジエーター型

 

 ふぇいさんの作品「unknown」は、商品名をもたない掘り出し物ユニットを使った作例。一見見たことがありそうな8cmウーハーも、六本木工学研究所の非売品(販売に至らなかったもの)とのこと。

 Woofer:六本木工学研究所製 8cmフルレンジ
 Tweeter:NorthFlatJapan販売 25mmソフトドーム
 Passive Radiator:中国製12cmケブラーコオーン

 まるで3wayのような見た目ですが、一番大きいのはパッシブラジエーターです。ミッドレンジの位置にあるケブラーコーンの8cmが、ウーハーの役目を担っています。

 大きなパッシブラジエーターの効果もあって、8cmフルレンジとは思えない厚みのある音を聴かせます。女性ボーカルは深みのある表現で、複数の人の重なり合うボーカルは有機的な溶け合いを見せ、ウッドホーンの音を上手く手懐けていと感じました。

 ベースギターと低音パーカッションは、ハイスピードに決まります。轟音のような唸りを感じさせる低音も見事で、大きな面積から出される低音の良さを感じ取ることができました。



綿密な測定で作られた小型スピーカー

 

 みやさんの作品「パッシブラジエーター型コンパクト2way Scarlet Tanager」は、スピーカー設計ソフトVituixCADの機能をフル活用した作品です。

 Woofer:Wavecore WF120BD03
 Tweeter:Wavecore TW030WA09
 Passive Radiator:Dayton Audio DS175-PR

 厚みのある生々しさと、しっかりとダンピングを効かせる音を両立させており、音が暴れやすいアニソンも安心して聴くことができました。再生音に付帯するノイズも少なく感じられ、現代的な精度の高い表現だと感じました。

 卓上で使うことを想定したサイズながら、吹奏楽やオーケストラの雄大さも表現できる音に、終始感心させられました。大面積のパッシブラジエーターだけでなく、吸音材など細かな調整の成果なのでしょう。



アルミと無垢木材のハイブリッド+パッシブラジエーター

 

 なないちさんの作品「LS02-ALフロア型パッシブラジエータスピーカー」は、表層をアルミで覆ったエンクロージュアが印象的。モダンな印象を受ける外観ですが、中身は杉無垢材で作られているなど、外から見えないところにも多くの特徴があるスピーカーです。

 Woofer:Dayton Audio DA115-8 ×2個
 Tweeter:Dayton Audio ND28F-6
 Passive Radiator:Peerless SDS-P830878

 J-POPSを聴くと、フワッと広がる音場が展開され、音数が多くなるサビでもスムーズな質感を維持していることに驚かされました。
 クラリネット協奏曲は、漂うような幻想的な雰囲気が美しく、コンサートホールにいるような気分になります。アルミだけでなく、無垢杉材を使ったことによる効果も少なくないと思われます。

 独自のコンセプトに基づくパッシブラジエーターは、しっかりとコシのある低音を表現。ベースラインやドラムが明瞭で、音楽に調和した鳴り方を堪能できました。



著書の表紙を飾るウェーブガイドスピーカー

 

 主催者の鈴木さんの作品「ウェーブガイドとアルミ振動板を使った高性能2ウェイシステム」は、入手しやすいハイグレードなユニットを搭載した、参考になる作例です。

  Woofer:SB acoustics SB17NBAC35-8
 Tweeter:SB acoustics SB26ACD-C000-4
 Wave guide:Monacor WD-300

リファレンス的な鳴りっぷりで、柔らかさのある高域を基調にしながら、全ての音を均質な表情で聴かせるタイプです。音色の正しさとでも言えば良いのでしょうか。正統派サウンドの作品だと感じました。

アコースティックギターを聴くと、ギターのボディの構造や、録音された場の空気感がそのまま再現される感じを受けました。LR2のクロスオーバー特性や、軸外特性も含めた評価軸(PIR)の活用が功を奏しているのでしょう。




無垢材によるスタガード共鳴管スピーカー

 

 MUKUさんの作品「無垢レゾ8号」は、パイオニアのトールボーイ型スピーカーを大胆に改造し、内部に長さの異なる4本のスタガード共鳴管を入れた構造。

  Woofer:Peerless SDS-160F25PR01-08 ×2個
 Tweeter:Peerless XT25BG60-04
 Wave guide:フロントバッフルに切削掘り込み自作

 歯切れのよいサウンドで、古い録音のjazzボーカルは抜群の鮮度で魅了されました。ロックでは、バシッと決まるドラムに、鮮明なボーカルが浮かび上がり、ライヴに立ち会ったかのような錯覚を起こすものです。

 表面の集成材はスプルース材で、ゆったりとした女性ボーカルでは語り掛けるような表現が見事。ウーハーの磁気回路を支持したり、2つあるウーハーそれぞれに異なるバッフルステップ補正を施したりという細かな使いこなしも大変参考になるものでした。



大型3wayスピーカー

 

 荒井さんの作品「30cmウーハー/ドームミッド/リボンツイーター 3ウェイシステム」は、高さ161cmに及ぶ大型スピーカーです。
 
  Woofer:Beyma 12BR70
 Midrange:VISAON G60FFL
 Tweeter:VISATON MHT-12

 かつて、パイオニアの3wayスピーカーからユニット等を移植したというパイン集成材で作られた本体は、今回の製作に合わせてMDF材での補強がなされました。
 オルガンやチェンバロは、美しさと写実性が両立した見事なサウンドで、どこにも音か籠らずにスーッと抜けていく印象です。

 大柄な本体でありながら、低音の音階は明瞭で、滲みはありません。LR4特性で仕上げられたクロスオーバーと、リジッドに固めたMDF補強材の良さが出ているものと思われます。残響や空間の表現も豊かで、情報量の多さを感じました。




おわりに

 昨年に引き続き、力作が集うイベントでした。来年は11月頃の開催を予定しているとのことで、また行けることを楽しみにしようと思います。




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