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20. スピーカー箱を補強する意味


 スピーカーのカタログを見ると、「エンクロージュア強度を高めて不要振動を抑制した」といった説明があります。オーディフィルのスピーカーでも、内部に金属の補強材を入れてエンクロージュア強度を高める工夫をしています。
 ここでは、スピーカー内部に補強材がある状態と、無い状態ではどのような違いが生まれるかについて説明します。

サブウーハー「SW-1」での例

 サブウーハー「SW-1」では、15~35mm幅のアルミ材を使って、左右の板を連結しています。超低音の大振幅に対しても、十分な強度をもたせることを目的としています。

  
    サブウーハー「SW-1」 (左)製品写真、(右)内部構造


 ここで、SW-1の側板を叩いたときの周波数特性を見てみましょう。側面の板をコンコン叩き、その音をマイクで収録しています。

  補強部材なし

  補強部材あり

 図中の赤線が、箱を叩いたときの音の周波数特性です。補強部材なしの状態では、200Hz付近に大きなピークがあり、板がボンボン鳴っているのが分かります。一方で、補強部材を加えた状態では、200Hz付近のピークが消え、1kHz~2kHzを中心として満遍なく広がった特性に変わっています。



ひのきスピーカー「SOLA Mk2」での例

 ひのきスピーカー「SOLA Mk2」でも、同じようなアルミ補強材が使われています。ただし、SW-1のような剛性一辺倒のものではなく、響きと剛性の両立ができる細めの部材を使っています。

     
   ひのきスピーカー「SOLA Mk2」 (左)製品写真、(右)内部構造


 先ほどと同様に、側面の板を叩いたときの周波数特性を見てみましょう。

  補強部材なし

  補強部材あり

 補強部材がない状態では800Hzや2.8kHzに鋭いピークがあり、コンコンとした強い響きがあります。無垢木材をそのまま使ったときの典型的なパターンで、このままでは癖が強く出てしまいます。
 補強部材を入れると、これらのピークが無くなり、3kHz以上の帯域までスムーズに伸びた響きが得られます。コッコッという適度にコントロールされた響きになります。


聴感での補強の効果

 こうした違いは、低音の質感に現れます。低く沈み込むような低音、力感がありながらもクリーンな低音は、しっかりと補強された箱から出ないと出てきません。オーケストラの低弦の旋律、バンド編成でのドラムとベースの掛け合いといった、細かな表現が可能かどうかが聴きどころになります。さらには、そこにボーカルやソロ楽器が入ってきたときに、埋もれずにその美しさが引き立つかどうかも、補強の有無で変わってくるポイントです。
 低音が鳴っているとき、スピーカーの箱には非常に大きなストレスがかかります。これをどう処理するかによって、低音のみならず、中高音を含めた全体の音のクオリティが変わってくるのです。




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