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第11回 空気室容量を変えたときの音質の変化


 今回は、空気室の大小についての実験です。

 空気室とは、バックロードホーンにおいてスピーカーユニットが入る小さな空間のことです。ユニットとホーンの間にこの空間があることで、ハイカットフィルターとしての機能があるといわれています。

 長岡先生の著書にある公式では、

   fx=10×S0/Va
   S0=スロート断面積(cm^2)
   Va=空気室容量(L)

 という式で、カットオフ周波数が計算されています。



 今回は、Fostex FE168SS-HPを搭載するS-076を例に、空気室のサイズを変えたときの音の変化を聴いてみます。

 Fostex FE168SS-HP搭載バックロードホーン S-076 「S-076」の図面はこちら




 用意した空気室は、4.8L(小)、5.8L(中)、7.2L(大)の3種類です。
 実際は、ユニットの体積が除かれるので、容量は500ml程度小さくなります。
Fostex FE168SS-HP搭載バックロードホーン S-076の空気室図面

<5.8L空気室(中)を聴く>

 S-076のスロート断面積は90cm2のため、「空気室(中)」でのカットオフ周波数は先ほどの公式より 10×90/5.8=155Hz となります。

 試聴すると、生き生きとしたバックロードホーンらしいサウンドが印象的です。低音量感や、ボーカルの明瞭さも申し分ありません。

 スピーカーを壁面に近づけると、低音量感はより増えましたが、ボーカルの細かいニュアンスが消えてしまうなどの副作用も大きく感じられました。このスピーカーの持ち味を発揮するには、少しばかり壁面から遠ざけた位置に設置するのが望ましいでしょう。


 Fostex FE168SS-HP搭載バックロードホーン S-076の空気室



<4.8L空気室(小)を聴く>

 「空気室(小)」でのカットオフ周波数は、10×90/4.8=188Hz です。

 試聴すると、中低域の分厚さが増していることが分かります。しかし、それ以上に高域(空間を潤すような広がり感)がミュートされる印象を受けました。その結果、中域(カーカーいう1~5kHzの帯域)が強めに聞こえる印象です。

 低域のダイナミックさも減少傾向で、あまり良いバランスではありませんでした。
4.8L空気室だけを聴けば、それほど違和感はありませんが、秀逸だった5.8L空気室と比べると今一つといった感じです。



<7.2L空気室(大)を聴く>

 「空気室(大)」でのカットオフ周波数は、10×90/7.2=125Hz です。

 先ほどの(小)と比べると、同じユニットとは思えないほどの良好な音質でした。
 ワイドレンジで、重低音の音圧も強いように感じます。空気室(小)との周波数特性では微々たる違いでしたが、聴感上は驚くほどに大きな差がありました。

 具体的には、(小)より(大)のほうが伸び伸びとユニットが鳴っている感じがありました。高音域は抑圧なく鳴り、中域もスムーズに出てきています。ややサ行が強く、ボーカルはハスキーな感じがあるが、fostexファンであれば違和感のない範囲だといえそうです。

 低音は、ホーンがしっかり動いている感じがします。空気室(小)ではホーンが強く制動されている印象でしたが、この空気室(大)では少し解放された感覚がありました。その一方で、ゴリッとくる低音の解像度は若干下がった感じもありますが、バランスは(大)の方が俄然よいものでした。

 中音域は、(小)では扱いきれないほどの凸を感じましたが、(大)ではかなり綺麗にまとまっています。ボーカルのバランス(張り出し感)もどの曲を聞いても問題ないレベルでした。

 壁際に寄せると、中低域~重低音がモリモリ出てきます。空気室(中)~(小)ではボーカルが埋もれてしまったが、空気室(大)ではバランスが保てていました。
 ここからは、【吸音材の調整】が必要かもしれません。空気室(大)であっても、壁際設置では400Hz付近が盛大に盛り上がってしまう感じがあり、ここを抑制すればかなりワイドレンジな聴感特性が得られると感じました。



<改めて5.8L空気室(中)を聴く>

 再び空気室(中)に戻します。
 先ほどの空気室(大)と比べると、かなりボンボンという中低音が強いことが分かります。ただ、それが音の厚みになっているともいえるので、一概にNGとは言えないのが難しいところです。

 空気室(大)と比べると、空気室(中)はボーカルは若干奥に行き、周波数特性上の4kHzのディップを感じさせる音になりました。

 ただ、全体のバランスから言えば、こちらの方が正しい音になっている。空気室(大)と比較して、空気室(中)は安心して聴いていられる音です。ボーカルの濡れた感じや、体温の表現も、空気室(大)より空気室(中)が圧勝です。



 以上が、3種類の空気室容量の比較試聴結果でした。長岡公式では、クロス周波数の計算値が200~250Hz付近になるよう空気室を設定することが多いのですが、今回のベストは空気室(中)の155Hzでした。この辺は、ホーンの広がり率や、ユニットの特性、ボーンの板材の鳴きなど、様々な要素が絡み合って決まってくるのかもしれません。

 それぞれの周波数特性は、次回説明しようと思います。



~続く~

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