AudiFill
TOP製品評論/情報イベントAudiFillについて連絡先
評論/情報オーディフィル サウンドラボ > 第15回 短いホーンをもつバックロードSPの音質
border
[前の記事へ]blank[次の記事へ]
border

第15回 短いホーンをもつバックロードSPの音質

前回は、FE126Eを搭載するバックロードホーンS-041の設計についてお話しました。今回は、ホーン長が130cmの状態、つまりS-041の中央部分だけでの試聴結果について記載します。

 FE126E搭載バックロードホーンS-041、中央部 FE126Eを搭載するバックロードホーンの側面 S-041
 中央部分のみのS-041

----------
搭載ユニット:FOSTEX FE126E
(口径12cm、m0:2.9g、Qo:0.25、実効振動板面積 66.4cm2)
空気室容量:2.7L or 1.9L
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:74%)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 約1.3m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)
----------
 

     

border

試聴結果(1.9L空気室)

 このS-041は、1.9Lと2.7Lの二種類の空気室を搭載することができ、まずは、小さいほうの1.9Lの空気室から試聴しました。長岡公式でいえば、Fx=260Hzとなる空気室容量です。

 試聴感想を、作製当時のブログから引用します。

 正面から見ると、かなり細みのスタイルのスピーカーですが、音は充実しています。低音も80Hz前後まで出ており、バランスもまずまずです。

FE126Eを搭載するバックロードホーン S-041

 花澤香菜のclaireを聴くと、女性ボーカルの活き活きとした表現が見事だと分かります。FOSTEXの紙コーンらしい張り出しの良さを基調として、音楽を楽しく聞かせるスピーカーだといえます。若干カマボコバランスで高域楽器が大人しいですが、単独で聴いていれば不満は覚えないでしょう。

 アコースティック楽器ではさらに潜在能力を発揮します。バイオリンの響きや、音像描写はしっかりしています。強力な磁気回路のおかげで、滲みやすいウッドベースも骨格豊かで、楽器の質感を伝えます。

 バックロードホーン(以下、BH)らしい音を聴かせるのは、やはり低音。音階は明解そのもので、(倍音がメインながら)オルガンやグランカッサの質感は十分。
音圧レベルそのものは、口径や本体サイズの限界を感じますが、それでも立ち上がりが明瞭な低音は十分に【聴こえる】のです。

 BHの欠点として指摘されやすい共鳴音は、ほぼ確認できませんでした。チェロ四重奏を聴いても、違和感は皆無です。ホーン長が短いBHは癖が出にくい…と言われますが、今回もその法則が適用できたようですね。

 欠点を挙げるとすれば、やや音に「固さ」があることでしょうか。ギターの独奏では、抑揚豊かな演奏に聴こえる一方で、ギターの本体が響かせる繊細な響きや倍音成分は少なめでした。オルガンももう一歩伸びやかさが欲しいところです。

https://blog.goo.ne.jp/4g1g4g0/e/41f46b0acb9c4bc1a6f9ed4d5d3ddb02

 S-041(中央部)は1.3mの音道しかなく、開口部面積もスロートの2.5倍しかありません。しかしながら、立派なバックロードホーンとしての音を聴かせてくれました。特に、質感の表現や、明瞭な低音、音楽の楽しさというバックロードホーンに求められる要素をしっかりと表現できており、満足度の高い結果が得られました



border

試聴結果(2.7L空気室)

 次に、2.7Lの大きいほうの空気室容量で試聴を行います。長岡公式でいえば、Fx=181Hzとなる空気室容量です。こちらも作製当時のブログから引用を行います。

 単純に空気室容量が違うだけなのですが、全く違う音で驚きました。大きな変化としては、音のレンジが広くなる一方で、深みや味わいが減少してしまう感じです。

   FE126Eを搭載するバックロードホーンスピーカー 2.7L空気室を搭載したS-041(中央部)


 ソプラノは、1.9Lは密度感が高い表現だったのに対し、2.7Lではサラッと流す感じで繊細。2.7Lは客観的な表現という感じであり、三味線のような土臭さが欲しいものでは逆効果。アッサリとした音になってしまいました。

 ウッドベースは、1.9L空気室では、緩急が自在な演奏を堪能できましたが、2.7Lでは輪郭が緩み、音程感も大幅に劣ってしまいボワンとした感じで鳴るようになってしまいました。

 その一方で、ギターは絶好調。1.9L空気室では硬さが残る音色でしたが、2.7Lはレンジが広く聞こえ、現代的な表現で好ましく感じました。

結論としては、こんな感じでしょうか。

【1.9L】濃厚、表情豊か、ナローレンジ、ピラミッドバランス
【2.7L】繊細、単調、あっさり、現代的ワイドレンジ、上ずってる



~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 2.7Lの状態で、さらに聴きこみを進めていきます。

 茅原みのり「境界の彼方」では、開放感のある音色です。シンバルワークが手に取るように分かり、分解能は極めて高いといえます。空気室を大きくしたことで、フルレンジの高域再生能力を十分に引きだせていることが分かります。フルレンジとは思えないレンジ感だといえるでしょう。

 一方で、低域が殆ど感じられず、音階も曖昧。中低域のレベルも低く、かなりハイ上がりだと言えると思います。良い意味で解釈すれば、楽曲の透明感の演出につながっている…といえるでしょうか。


 次は、アコースティック楽器を聴いてみます。ギターは、空間の広がりを感じさせ、音像もシャープ。手の動きを伝える高域の情報も十分です。バイオリンは澄んだ表情で、切れ味に富んでいるのが好ましいです。胴の響きは得られませんが、音色の美しさは逸品です。

 一方で、2.7L空気室の課題は中低域にあります。パイプオルガンは、低音がボヤけてしまい、音色も単調です。明らかにホーンが駆動できていない感じなのです。これではバックロードホーンの良さが感じられません。
 チェロでは、かなり高い帯域に(500~800Hz)にホーン鳴きが感じられました。和太鼓を聴いても湿っぽい感じで、余り好ましくありません。

https://blog.goo.ne.jp/4g1g4g0/e/9edcadb68216cb2693d58c71be002d2b

~~

 以上のように、空気室を1.9Lから2.7Lに大きくしたことで、音のレンジが広くなり、現代的な開放感のある音色になりました。バイオリンやギターでは好ましい結果が得られています。一方で、あっさりとした単調な音色でもあり、低音の音圧感や質感は大きく低下してしまうように聴こえました。大太鼓やチェロ、三味線などは大きく魅力が損なわれてしまう感じです。


border


次回は、「S-041」の周波数特性やインピーダンス特性を説明しようと思います。


~続く~

border
[前の記事へ]blank[次の記事へ]
border
評論/情報オーディフィル サウンドラボ > 第15回 短いホーンをもつバックロードSPの音質

Copyright © 2016 AudiFill All Rights Reserced.