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第17回 長いホーンと短いホーンの比較

 前回までは、ホーン長が1.3mの状態について説明してきました。今回は、ホーン長を2.5mまで伸ばした状態と比較をしていきます。

 FE126E搭載バックロードホーンS-041、中央部 FE126E搭載バックロードホーンS-041、全体
 (左)ホーン長1.3mの状態、(右)ホーン長2.5mの状態


 音道を延長するか否かによってホーン長を決めているので、ホーン断面積は下図の青線と赤線で表すことができます。ホーン長が1.3mの状態では青線部分まで、2.5mの状態では赤線まで含まれるホーンになります。

FE126E搭載バックロードホーンの音道

 今回の評価で使用したスピーカーの各種定数を、下記の表に記載します。設計図面などの詳細は、第14回「Fostex FE126E搭載バックロードSPの設計コンセプトと図面」を参照すると良いでしょう。

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搭載ユニット:FOSTEX FE126E
(口径12cm、m0:2.9g、Qo:0.25、実効振動板面積 66.4cm2)
空気室容量:1.9L
スロート断面積:49cm2 (スロート絞り率:74%、Fx=260Hz)
ホーン広がり率:0.75
ホーン長さ: 1.3m or 2.5m
開口部面積:128.1cm2 (断面積比:2.6倍)※ホーン長1.3m
      313.6cm2 (断面積比:6.4倍)※ホーン長2.5m
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ホーン開口部の周波数特性の比較

 まずは、ホーン開口部の特性を、1.3mの短いホーンと2.5mの長いホーンで比べてみます。

  FE126E搭載バックロードホーンのホーン開口部特性
    長さ1.3mのホーン開口部特性

  FE126E搭載バックロードホーンのホーン開口部特性
    長さ2.5mのホーン開口部特性

 ホーン長が1.3mの場合は、150Hzのピークが最も低い周波数になりましたが、2.5mの場合は65Hzにピークが確認されます。さらに、倍音として120Hz、200Hz、280Hz、320Hzにもピークが確認されました。

 2.5mのホーン長での基本共振周波数を計算すると 340(m/s)÷2.5(m)÷4=34(Hz) になります。実測で確認された 65Hzのピークは34Hzの2倍音、120Hzのピークは3倍音と解釈することができそうです。



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軸上1mでの周波数特性

 次に、軸上1mでの特性を見てみましょう。ここでは、一般的なスピーカー設置と同じように、壁際近くにスピーカーを設置した状態で測定をしました。

  FE126E搭載バックロードホーンの軸上1m特性
    長さ1.3mホーンの状態での特性

  FE126E搭載バックロードホーンの軸上1m特性
    長い2.5mホーンでの軸上1m特性

 違いは一目瞭然で、1.3mのホーン長では80Hz付近にピークがあったのに対し、2.5mのホーン長では80Hzのピークはなく、200Hz付近から30Hzまでダラ下がりの特性になっています。

 200Hz~1kHzの中低域を見ると、2.5mホーンの方が細かい凸凹がある特性に見えます。とりわけ、300Hz付近にある鋭いピークはほかの帯域と比べて+10dB程度の音圧になっており、ホーン鳴きとして認識されてしまう可能性があります。

 いずれにせよ、2.5mのホーン長では低音が不足しているように感じました。不必要にホーンを長くすることは、ダラ下がりの低音特性になってしまい、低音量感が感じにくいスピーカーになってしまうようです。



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軸上0.5mでの周波数特性(部屋中央での測定)

 次に、軸上0.5mでの特性を見てみます。この測定でのスピーカーの設置位置は、部屋の中央付近に変えています。こうすることで、より部屋の影響を除外し、純粋にスピーカーの性能を把握することができます。

  FE126E搭載バックロードホーンの軸上0.5m特性
    長さ1.3mホーンの状態での軸上50cm特性

  FE126E搭載バックロードホーンの軸上0.5m特性
    長さ2.5mホーンの状態での軸上50cm特性

 周波数特性を見ると、双方とも低音不足であることが分かります。低音量感を左右する100Hz付近の音圧は、中高音域と比べて10dB以上低下しています。
 本作は、床から離れたところにホーン開口部があるため、低音を出すにはスピーカー本体を壁に近づけてバッフル効果(ホーン延長効果)を出すことが必要だったものと思われます。



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スピーカーユニット直前での周波数特性

 最後に、スピーカーユニット振動板から5cmの近距離での測定結果を示します。これは、インピーダンス特性と同様に、スピーカーの音響的な動作を知るための重要な情報を得ることができる測定方法です。

  FE126E搭載バックロードホーンのユニット直前特性
    長さ1.3mホーンの状態でのスピーカーユニット直前の特性

  FE126E搭載バックロードホーンのユニット直前特性
    長さ2.5mホーンの状態でのスピーカーユニット直前の特性

 1.3mのホーン長の場合、60Hz、150Hzに鋭いディップ(ホーン共鳴)が生じたのに対し、2.5mのホーン長の場合、40Hz、90Hz、130Hz、205Hzにディップが確認されました。

 最初に挙げた「ホーン開口部特性」で現れた凸になる周波数とは若干異なりますが、こちらのスピーカーユニット直近特性で表れる凹の方が、ホーンの共鳴動作をより正確に表しているものと考えています。

 興味深いのは、2.5mのホーンでは基音(40Hz)、2倍音(約80Hz)、3倍音(約120Hz)という感じの倍音の出方になる一方で、1.3mのホーンでは、基音(60Hz)、3倍音(約180Hz)のような結果になることです。スロートに対する開口部の面積が大きいホーン、つまり同じ広がり率でもホーンが長くなると、2倍音の共鳴が出現し低音の音色が変化することは注目に値するといえます。

 今回は、2.5mのホーンは低音音圧の不足が顕著であり、それが聴感上の印象を決定づけてしまいましたが、この特徴的な2倍音の出現については別の作例で検証してみたいと思っています。



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まとめ

 ここまで、FostexのFE126Eを使った作例を説明してきました。2.5mの長いホーンが良いかと思いきや低音量感が激減してしまい、1.3mの短いホーンの方が好ましい印象を抱く結果になりました。

 一般的には長い方が良いと言われるバックロードホーンのホーン長ですが、長いホーンは低音音圧(量感)の低下を招くため、一概に良いとは言えないのです。

次回は、同じ箱でスピーカーユニットを変えた時の周波数特性の変化を見ていこうと思います。



~続く~

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